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『ババヤガの夜』―女性同士の絆と暴力を描く異色のハードボイルド小説

  • horikoukyokudou
  • 7月28日
  • 読了時間: 3分
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王谷晶による小説『ババヤガの夜』は、暴力に満ちた裏社会を舞台にしながら、女性同士の連帯と絆を鮮烈に描き出した話題作です。2024年には英国推理作家協会賞(CWAダガー賞)翻訳部門を受賞し、ロサンゼルス・タイムズの「夏の注目ミステリー」にも選ばれるなど、国際的にも高い評価を獲得しています。

単なるバイオレンス小説に留まらず、**「暴力」と「人間ドラマ」**が絶妙に交錯する本作は、ハードボイルド小説ファンだけでなく、心理描写や女性同士の関係性を重視する読者にも強くおすすめできる一冊です。



『ババヤガの夜』のあらすじ(ネタバレなし)

物語の主人公は、喧嘩が異常に強い若い女性・新道依子。裏社会でも恐れられるその腕っぷしから、スラブ民話に登場する魔女「ババヤガ」を思わせる異名を持つ存在です。

ある事件をきっかけに、依子は暴力団「内樹會」の組長の娘・内樹尚子のボディーガードを務めることになります。尚子は暴力団の世界から切り離された“お嬢様”として育てられた女性で、大学や習い事に通うだけの日々を送っています。しかし、その無表情で謎めいた態度には、彼女が抱える暗い事情が透けて見えます。

護衛役として尚子と行動を共にするうちに、依子は次第に彼女の内面に触れていきます。友情とも恋愛ともつかない、言葉にできない感情が二人の間に生まれていく過程が、この物語の大きな魅力です。




作品の魅力

ハードボイルドの緊張感と人間ドラマが融合

『ババヤガの夜』は、ハードボイルド小説ならではの暴力描写が特徴です。裏切り、抗争、報復――裏社会で生きる者たちの日常は、常に命の危険と隣り合わせです。しかし、この作品は単なるバイオレンスアクションではありません。

依子と尚子というまったく異なる世界に生きる二人の女性が、暴力に支配された環境の中でお互いを知り、信頼を築いていく過程が非常に丁寧に描かれています。「荒々しい世界の中に、かすかな優しさや希望が見える」と、多くの読者が高く評価しています。



女性同士の複雑な絆

依子と尚子の関係性は、単純な友情でも恋愛でもありません。「これは一体どんな感情なのか」と読者に問いかけるような、名前をつけられない絆が物語の核を成しています。


「ババヤガ」という象徴性

タイトルにもなっている「ババヤガ」は、スラブ民話に登場する恐ろしい魔女の名前です。依子がこの異名で呼ばれる理由は、彼女の外見的特徴や圧倒的な強さだけではありません。物語を読み進めるうちに、この呼称が持つ深い意味が明らかになっていきます。



感想

『ババヤガの夜』は、暴力と緊張感に満ちたストーリーでありながら、読後には不思議な温かさが残ります。特に、女性同士の複雑で繊細な感情のやり取りが、これまでのハードボイルド小説にはなかった新しい魅力を生み出しています。

海外でも「シスターフッドを描いた新しいバイオレンス小説」として評価され、翻訳版はクライム・フィクション・ラバー最優秀翻訳賞にも選ばれました。



こんな人におすすめ

  • ハードボイルドやバイオレンス小説が好きな人

  • 女性同士の絆や心理描写に興味がある人

  • 国際的に評価される日本文学を読んでみたい人



まとめ

『ババヤガの夜』は、裏社会を舞台にした激しいバイオレンス小説でありながら、女性同士の絆や人間らしい感情を緻密に描いた異色の作品です。激しい暴力シーンが苦手でなければ、読み終えた後にきっと強い余韻と感情の揺さぶりを味わえるでしょう。

ハードボイルド小説としても、人間ドラマとしても傑作といえる一冊。今、もっとも読むべき話題作の一つです。

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